このページでは、藍染め生地の色落ちと水洗いについて、実際の画像をお見せしながら詳しく説明しています。
(最終更新:2019年10月)
おそらくこのページを見ている方の中には、「藍染めって色落ちが心配」と考えてる人も多いかと思います。
私(華蔵店主)自身もネットで色々と調べてみましたが、文字でさらりと説明しているページはありましたが、詳細な解説はなかなか見つかりませんでした。
ならば自分で作ってしまおう!という事で、取引している中国の藍染め工場(こうば)の責任者さんの知識も借りながら、画像をたくさん使った藍染めの色落ち解説ページを作成した次第です。
当店で販売している藍染め生地をお買い上げいただく際の判断材料にしたり、天然の藍染染料についての知識を身に付けていただけるかと思います。
藍染め生地を実際に洗った際の色落ち
今回は、以下の画像にある様々な藍染め生地を実際に水洗いしてみました。
まずは、色合いの薄い生地で試してみます。
藍染め生地を水に入れた直後。
上半分には直射日光が当たっているので、かなり明るく見えていますね。
水に入れた直後は、何事も無いように透明な水が..
あれ? 藍染め...のハズなのに、何というか色合いが!?。
水は藍色になると思ったのに、なぜか黄色っぽい(というか麦茶みたいな)色になってしまいました!?
これは、『生地に定着していない、乗っかっているだけのような状態の藍の色素が落ちて水に溶けた』事が原因です。
最初はこの水の色に驚くかも知れませんが、天然の染料を使った藍染め生地を水洗いすると、水の色がこのようになります。
科学原理的には、「酸化反応」と「中和反応」が働いています。
蓼藍(タデアイ)を発酵させて作った藍染めの染液と、染め上がり直後の生地は、通常PH9.5程度の弱アルカリ性になっています。
この生地の表面に付着している、部分的に酸化&中和した未定着の(余分な)染料が溶け出して、このような色合いになるようです。
※ 作りたて(染めたて)の生地の場合は、(十分に酸化していない事により)黄色っぽい色がほとんど出ない場合もあります。
※ 洗濯機などで水を換えずに一気に洗うと、この後で出てくる藍色の色素と混ざり、結果的に黄色ではなく黒っぽい色に見える場合もあります。
藍染めに詳しい人であれば、「藍染めはアルカリ性(の洗剤)に弱い」という話を聞いた事があるかも知れませんね。
アルカリ性どうしが反応して、色素が不安定になってしまう事が一因のようです。
逆に、「お酢(酢酸)を使うと色落ち防止(色止め)になる」という話を聞いた事ある方、これも正解です。
生地の製造元でも、特殊オーダーが入った際には生地の作成工程で「氷酢酸」という酢を使うことがあります。
酢は酸性なので藍染めと中和反応を起こし、結果的に藍染め生地がPH7.0の中性に落ち着きます。
こうなると、生地と色の結びつきがより強くなり、色が落ちにくくなるそうですよ。
さらに、中性になった生地は手触りがより柔らかく優しくなります。
今回の水洗いでは酢酸は使用していませんが、購入した藍染め生地をはじめて洗う際は、『洗剤を入れない普通の水道水』で洗ってくださいね。
酢酸を使う場合は、『少量の酢酸を入れた水』に一晩漬けておいてから洗うのもいいですよ。
それ以降は他のものと一緒に洗濯機で洗う事ができますが、できれば中性洗剤を使ってくださいね。
水を換えて再度洗ってみると、今度は(ちょっと分かりにくいですが)水が薄い藍色になりましたよ。
水が黄色っぽくなるのは最初だけで、後は薄い藍色の水が出ます。
藍色が薄いのは、生地の色合いが薄い事が理由です。後ほど説明する濃い色の生地では、水の色も濃くなりますよ。
次は、柄が入った一般的な藍染め生地を水洗いして、色落ちするかどうかを見てみましょう。
ちなみに撮影に使っている藍染生地は、販売時に出たハギレや、ちょっとしたワケありの生地たちを使っています。
水に入れて揉み揉みと洗っていくと..
やはり、明るい色合いの生地の時と同様、黄色がかった色になりました。
黄色くなる理由は、明るい生地の場合と同様ですので省略しますね(すぐ上に書かれています)。
こちらは生地の色が濃い分、藍色の水も混じっているので黄緑色っぽくなりましたね。
そういえばこの色、生地を染色するときの染液の色に似ていたりします。
やはり、未定着の(余分な)色素が溶け出ているんですね。
水を換えてからよくよく洗うと、堂々とした立派な(?)藍色の水が出ましたよ。
これ以降水を換える度に、出てくる藍色はだんだんと薄くなっていきます。
が、だんだんと薄くはなりますが延々と薄水色の水が出てくるので、どこかで区切りをつけて水洗いを終了してください。
酢酸水に一晩漬け置いた生地であれば、出てくる色、あるいは水を換える回数がもう少し減ると思います。(きちんと比較した事がないので不確実ですが..)
『よく洗っても薄水色の水が出るだけ』という状態まで洗えば、(この水色は色移りしないので)後は乾かせばOKです。陰干しの方が良い、と書かれたHPもありますが、当店の生地は天日干ししても大丈夫です!
綿100%の藍染生地って、多少手荒く扱ってもどうこうなる物でもありませんのでご安心ください。
長い状態の生地はシワを伸ばすのがちょっと大変ですが、ここで頑張っておく方が後々の扱いや保管も楽になります。
以降は洗濯機で他のものと一緒に洗っても色移りはしませんが、アルカリ性の強い洗剤の使用は(色落ちしたり生地が傷む事があるので)避けてください。
..とはいえ、市販の普通の洗剤は粉状、液状ともに中性から弱アルカリ性の範囲なので、それほど気にしなくても大丈夫ですよ。
次は、濃い色の無地生地で試してみましょう。
ガツンと濃い色(当店の販売生地で言えば、#9や#10クラスの濃さ)の生地を水洗いしてみます。
果たして出てくる水の色は!?
画像は水に入れた直後です。
期待を込めて(?)ジャブジャブとしていくと..
まさに予想通りの色になりました。黄色+藍色=黄緑色ですね。
無地生地には防染材(大豆と石灰の粉)が付いていないので、濁りの少ない、透明度のある水になります。
この後水を換えるごとに、濃い目の藍色→薄い水色に変化していきます。
ちなみに、「初めて洗うときに、2日間くらい水に漬けっぱなしにしておく」と、洗い上がりの生地の色がある程度均等になるらしいですよ。
これはこの記事を書く前日に聞いたばかりの話なのでまだ試せていませんが..
(この「水に漬けっぱなし作戦」と「酢酸水に一晩漬けておく作戦」についてもいずれこのページに追記したいと考えています)
ついでに、柿渋染めの生地も洗ってみました。
柿渋については藍染めとは正反対で、PH4.0程度の弱酸性になります。
ちなみに、藍染めに柄をつけるのに使う防染材(大豆と石灰の粉)は、石灰なのでアルカリ性です。
...柿渋に、この防染材を使って柄をつけようとすると、「中和反応」が起きます。
職人さんの技によって、簡単な柄であれば付ける事ができるのですが、やり過ぎると染め上がりの色合いが変になったり、柿渋の染料にダメージを与えてしまいます。
なので、当店でも基本的には柿渋染めは無地のみを扱っています。(柄生地はオーダーメイド対応です)
画像は水に入れた直後です。これをジャブジャブとしていくと..
普通に、生地の色と同じような色の水になりました。
柿渋に含まれている染料、タンニンの色ですね。
柿渋染めは、少し上でも書いたように、弱酸性の性質を持っています。こちらは藍染めと異なり、『酢酸を使っての水洗いはダメです』
酸性同士で反応してしまい、黒っぽい色などに変色してしまう場合があります。
これ以降のお洗濯にも、酸性洗剤(※お風呂屋掃除や水回り用のもの)は使用せずに、一般の洗剤(中性から弱アルカリ性)を使ってくださいね。
ここまで書いて、「藍染めと柿渋染め生地を一緒の水に一晩付けるとどうなるんだろう?」などといった疑問が湧きました。これもいずれ試して紹介させていただきますね。
今回は、色落ちの状態を詳しくお見せできるように、ボウルで手洗いを行っていますが、実際に水洗いする際は
「お風呂場に水をはり、その中に生地を入れて一晩放置しておく」
「洗濯機の毛布洗いモードでそのまま洗う」←折り畳んである場合は生地をクシュクシュにしてください(折り目が洗濯機内部で強くこすれ、その部分の生地の色が落ちて白い線のように見えてしまう場合があります)
などでも大丈夫ですよ。
豆知識的な雑学を色々と補足的に書いたので、かなりボリュームのあるページになりました。
最後まで読んでいただいた方、どうもありがとうございます!